2013年9月23日月曜日

(1)「EMDR」 ETV特集 トラウマからの解放

最初の1分ぐらいだと思いますが
撮れていなかったので途中からになります




清水誠一郎さん 通勤してる途中、いろいろなものが見えちゃうんですよね。幸せな家族風景だったりとか、車にお母さんと娘が乗ってる映像だとか。そうなると、それだけになっちゃうんですよね。なんで仕事に行かないといけないんだろう、どうせ終わった人生だしみたいになっちゃう。バイクで通勤しているので、特に3号線というところを通るんです。何回もありますもん、3号線は大型がいっぱい通るから、右に切っちゃえば終わるんだよなと。右に切っちゃえば娘のところに行けるとかですね。それは何回も思うんですよね。



死にたいという思いに繰り返し襲われた清水さん
 
心の傷、トラウマを受けた後に生じる
 
PTSD、心的外傷後ストレス障害と診断されました
 
 
その症状はつらい記憶が鮮明に蘇る「再体験」
 
記憶につながることを避ける「回避」
 
不眠やいらいらなどの「過覚醒」
 
自分を責めたりする「否定的な認知と気分」など
 
 
清水さんもこうした症状に苦しんでいます
 
 
清水さんは妻と共に大切な3人の息子を育て上げたいとの思いから
 
今年4月、トラウマに焦点を合わせた治療をしようと決意しました


その様子を撮影することに清水さんが同意したのには訳がありました
 
それは犯罪被害者の遺族がどれだけ深く心を傷つけられているのかを
 
少しでも多くの人に知ってもらいたいとの思いです
 
 
担当するのはトラウマ治療を専門に行なってきた
 
医師の仁木啓介(にきけいすけ)さんです


仁木医師 一段落したので、今回初めて心ちゃんの事件について最初のところをEMDRというトラウマ治療で処理をしてみたいと思います。

清水さん はい。


トラウマの治療にはいくつかの方法があります
 
 
今回、医師が選んだのはEMDRという比較的新しい方法です
 
(EMDR=眼球運動による脱感作と再処理法
 
資格を持つ専門家だけが行うことができる)


仁木医師 ここに発光ダイオードが光ってますが、これが左右に動き出します。


アメリカで開発されたこの機械は
 
EMDRを行う際、患者の脳に刺激を与えるために使います


仁木医師 これ自体も光るんですけど、(手に握るパーツ)左右交互に振動します。


まず最初に医師は
 
清水さんが最も苦痛を感じる記憶や感情は何かを探っていきます


仁木医師 お話しなくていいです。そして、一番最初に引っかかる何か嫌なこと、ドキドキでもいいし、気になる、苦しいと思うようなこととか、一番最初に引っかかるものが出てきたところで止まって教えてください。

清水さん はい。

仁木医師 で、この明かりを目で追いながら。


EMDRではカウンセリングをしながら
 
眼球を左右に動かす、手に振動を与えるなどの方法で
 
患者に左右交互の刺激を与えます
 
すると、トラウマ体験の記憶に伴う強い苦痛が弱まっていきます
 
 
その効果には個人差がありますが、
 
患者への負担が少ないトラウマの治療とされています



仁木医師 過去のいろいろな出来事が全く別のものに改変されるわけではないんです。そのときのとどまったいろいろな感情や、考え、またそのとき自分を責め続けているものが、そこにタイムカプセルのようにとどまっているんですね。ですから、過去のとどまっているものを解放してあげると。そしてその本来あるべき姿に戻してあげるのがEMDRだと思います。


一番最初に思いつく苦しい記憶は何かと問われた清水さんは
 
事件の日のある瞬間を思い浮かべました


清水さん 一番・・・。

仁木医師 止まった? はい、深呼吸して。

清水さん (深呼吸)

仁木医師 それは何ですか。どんな場面?

清水さん うん。うん、そうですね。娘がやっぱり、こう、角を曲がるところですね、最後に。

仁木医師 うん。

清水さん 最後の姿を見た瞬間ですかね、はい。

仁木医師 最後の姿ね?

清水さん はい。



このとき思い浮かんだ記憶
 
それは娘の心ちゃんを
 
犯人が潜むトイレのほうへと送り出した場面でした


清水さん あのとき呼んでれば助けれたかなと、はい。もしかしたら、その時点で止まっていたかもしれないので、1回。そうしたら時間が多分ずれていたんじゃないかなと。


トイレに行く心ちゃんを呼び止めなかった自分を
 
心のなかで責めていました
 
 
それを思い浮かべた状態で
 
清水さんに左右交互の刺激を与えながらカウンセリングを続けます


仁木医師 彼女はどんな表情でトイレに行ったんですか。

清水さん 笑って・・・。

仁木医師 それに気がついて、それと一緒に(目を動かして)。


清水さんは、
 
心ちゃんがあのとき1人でトイレに行けるようになったのが
 
うれしそうだったと思い当たりました


仁木医師 今何があります?

清水さん なんか、振り向いた顔が笑っているような感じがします。振り向いてるような気がします。

仁木医師 それと一緒に。振り向いてくれた。

 
思い浮かべることすら苦痛だった場面を
 
心ちゃんの笑顔と結びつけて語れるようになっていました
 
 
治療はその後も続いています
 
5カ月たった今でも
 
娘を失った苦しみに変わりはありません
 
 
しかし、不眠などトラウマが引き起こす症状は減り
 
休まず仕事に通えるようになりました


清水さん 考え方を変えることはできるんじゃないかなと。自分を責めてる部分が多いので、そこがもっと、例えば犯人にその部分が向けられたりとか。心のことに関しても、申し訳ないと思ってる気持ちが、心はそうじゃなくて、もしかしたらあのときはうれしかったんじゃないかとか。違う方向に考えるっていう面では、そういう考える道をつくっていただいてるというのは少し思うところあるんですよね。


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