2013年8月31日土曜日

「打ち合わせ、絵コンテ直しなど」宮崎駿スペシャル『風立ちぬ』1000日の記録(4) プロフェッショナル仕事の流儀



宮崎さんの映画づくりは自らとスタッフをぎりぎりまで追い込んだ、まさに総力戦だ
 
およそ1500カットを300人のスタッフが2年がかりで仕上げていく
 
 
基になるのは宮崎さんが準備段階から書き進めていた絵コンテだ
 
これを基に精鋭ぞろいのアニメーターがキャラクターなどに動きをつけていく
 
およそ2時間の映画で使う紙は16万枚以上にのぼる
 
それを宮崎さんが一つ一つチェックして仕上げていく


宮崎 すこーししか上がんないから分かんないんですよ。髪の毛が上がったと思ってない、ほとんどの人が。だけど気配になるんです。髪の毛が動くんですよ、本当に人間は。(奈穂子が階段の手すりに手をかけている)


宮崎さんの場合、このチェック作業と並行して
 
その先のストーリーを考え、絵コンテをつくる
 
大まかな構想はあるが、映画の結末をどうするか
 
ぎりぎりまで考えるのが宮崎さんのやり方だ


宮崎 ふふふふ、なんという面倒くさい映画だ。

 
監督の仕事はそれだけではない
 
物語の世界観をつくる美術との打ち合わせ



宮崎 ここら辺の煙、こっちに這ってるといいですね。ちょっとこう、たむろしてるとかね。みんな違うんですよ、風は。ここは吹いてる、ここはちょっと停滞してる。(工場の煙突から煙が出ている場面)


そして色彩の設計


宮崎 俺、散々悩んだ挙句、これしかないと思う。これはね、覚悟。そのときの常識とかなんとかじゃなくてこの赤しかないんだって。(ベランダから乗り出して紙飛行機をつかもうとしている場面の奈穂子のワンピースの色について?)


この新作で、宮崎さんがこれまで以上に力を入れたことがあった


宮崎 群衆っていうのはどういうものかって言ったら、主人公じゃない、情けない人たちじゃなくて、ちゃんと世の中を支えてる人たちだから、ちゃんとした人間たちを描くこと。


それは、市井の人たちをしっかり描くこと


宮崎 駄目だね、全部描き直す。(絵コンテをダンボールの中へ)


最も手がかかったのは関東大震災のシーン


宮崎 違う、違う、違う。(男性が荷物をたくさん持ち上げている)
 風呂敷っていうのは手元に近づけて持つもんだ。こんなふうにぶら下げて持つもんじゃない。体にくっつけて持つんだ。こういうこと絶対しない。(着物の女性)
 だって、そのままずーっと走ってくるはずないじゃん。転ばなくたって手ぐらいつくだろう、「あっ」って。(ハンチングの男性がこちらに走ってきて転びそうになり、手をつく)


群衆を描くのは手間がかかるため、
 
一般的なアニメーションでは避けられがちだ
 
だが、それを厭わず描く


宮崎 お父さんは腰をしっかり。(スーツにソフト帽の男性が女性か子どもを抱き抱え上げる)


週に一度のラッシュ
 
完成したカットをその目で確かめる
 
 
全てのカットが当時の空気を写したものになっているか
 
この4秒のカット、完成までに実に1年3カ月を要した
(群衆が慌ただしく行き交う中で、はぐれそうになる奈穂子の手を二郎がつかんで引き寄せる)


宮崎 うまくいったな。(男性スタッフに近づきながら)

男性スタッフ あっという間でびっくりしましたけど(笑)

宮崎 (笑) あっという間以上のものがあったよ。

男性スタッフ ありがとうございます。

宮崎 あー、うまくいった。

男性スタッフ ありがとうございます。

宮崎 (笑) でも、うまくいってた。


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