壇蜜 サワコの朝(4)「ない袖は振れない」

阿川佐和子　でも、ほんとに私の周りで壇蜜さんのファンがおじさんから、おにいちゃんから、おねえちゃんから、おばさんまでいるんですよ。

壇蜜　ほんとですか？

阿川佐和子　うん、ほんとに。不思議って言ったら失礼なんですけどね。
　まあ、女性に人気があるっていう理由は男性の理由とはちょっと違うかもしれないけど。
　例えば、ご自分のことはさておいて、女に嫌われるタイプの女と、女に好かれるタイプの女ってどこら辺が違うっていうふうに思われます？

壇蜜　そうですね、女に嫌われる女ど真ん中だと思いますね。

阿川佐和子　誰が？

壇蜜　(左手を挙手)

阿川佐和子　だから、それが嫌われるタイプじゃないんだって。

壇蜜　あははっ。

阿川佐和子　それはなんなんだろうって。
　例えば、「あ～ん」って言うと、「何、一人だけモテようとして」って言いたくなるんだと思うの、普通女の人はね。でも壇蜜さんがそれをやることはかっこいいって。

壇蜜　ああ～。あくまで憶測なんですけど、私の「ああ～ん」っていうのは、「ああ～ん」にかぎかっこが付いてるからなんじゃないかなって思うんですよ。

阿川佐和子　はい？　ええ。

壇蜜　恐らく、そうやって男性に好かれようと思って「ああ～ん」っていうことに対して、イコールビジネスと言われてもしょうがないんですけども、何かこう、人の喜びがその先にあるのを見越しちゃってる自分もいて、本心じゃないようにも見えるんでしょうね。

阿川佐和子　ああ～。そうか、そうか。なるほどね。
　だからといってセリフを言ってるっていう感じじゃないんだけど、「仕事ですから、私」っていう意気込みが感じられるというか、潔さが感じられるんですよ。




阿川佐和子　これから仕事をする上で、じゃあ何が嫌で何をやってみたいとか・・・。

壇蜜　写真の世界に関しては線引なくいろんなことをぶつけていただけたらうれしい。
　ただ映像というのはいろんな方が見てますから、だから必ずしも目に入りたくない人も見てしまう現状なんですよ。

阿川佐和子　ほう。

壇蜜　だから見たくもないものを見せる、いろんな意見がある中で個を貫き通すような強さっていうのは映像に対しては持ちたくないですね。

阿川佐和子　ほお～・・・なるほど。

壇蜜　だから、自分の出せるもののすみ分けをしっかり線引していくことが、やはり人を不快にさせない、粛々とお仕事ができるっていう・・・。

阿川佐和子　いつそういう考え方を身に付けられたんですか？

壇蜜　恐らく、ない袖は振れないっていう言葉がすごく自分の中に・・・。

阿川佐和子　あるの？

壇蜜　はい、ある。
　例えばテレビで「身内を紹介してくれないと駄目なんですよ」とか、「暴露話がないと出れないんです」とかっていうのは私はいらないんじゃないかなって思ってます。
　

阿川佐和子　ご自身の家族のこととか。

壇蜜　だからいろんな人に心配や迷惑をかけた上でいるこの世界に対して、私がわざわざその心配の種をこうやって上に持ってきて世間様に晒すことはきれいではない。

阿川佐和子　フェアじゃないと。

壇蜜　はい。

阿川佐和子　ほお～。律儀なんだ。

壇蜜　律儀だと思います。そうでもしないと、母や父に借金みたいなもんですからね。心の借金を返してないんですよ、まだ。

阿川佐和子　へえ～。ああ～、私もいっぱい返してないような気がしてきた、だんだん(泣)

壇蜜　未払いですか？(笑)

阿川佐和子　未払い、未払い。

壇蜜　滞納ですか。

阿川佐和子　うん。滞納のまま死んじゃいそう～。

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